ギャンブルや勝負事には、「期待値」という考え方があります。しかしこの期待値という数値、聞いたことはあるけどどういう意味なのかイマイチ理解していないという方も多いかと思います。
この記事では期待値の基本的な考え方や算出方法、また期待値がどういう意味を持つ数値なのかを実例を踏まえて徹底解説。さらに期待値を馬券予想に活かす方法も説明していきます。期待値の高い馬券を買い続けることができれば、馬券の回収率も必ず上がります。
馬券予想のスタンスや考え方などに悩んでいる方は、この期待値も参考にして馬券予想をしてみましょう。今以上の馬券成績を残せるようになるかもしれません。
期待値の計算方法
まずは「期待値」というものを理解していきましょう。期待値とは、「1回の試行で得られる平均値」のことです。と、言われても何が何だかよくわからないかと思いますので、具体例を挙げてみましょう。
例えば「じゃんけん」。じゃんけんで勝つ確率は1/3です。仮に「じゃんけんに勝ったら300円もらえる」というゲームがあるとしましょう。この場合、確率通りであれば3回に1度300円もらえるわけですから、1回の挑戦で期待できるのは100円となります。
このゲームの参加料金が100円であれば、100円で挑戦して、1回100円戻ってくる見込みですから、「期待値=100%」となります。同じく料金が50円であれば「期待値=200%」、料金200円であれば「期待値=50%」ということになります。
では競馬における期待値は、どう計算すればいいでしょう?
競馬における期待値
馬券に限って言えば、実は万人に共通する期待値というのは算出できません。競馬の期待値を算出するには、その馬券の「的中率(じゃんけんゲームで言うところのじゃんけんで勝つ確率)」が分からないと計算できません。
しかし馬券の的中率は、レースが終わらないと計算できません。例えば単勝200円の一番人気馬の単勝馬券があったとします。ある競馬ファンは、「その馬券の的中率は80%だ」と思うかもしれません。しかし別の穴党競馬ファンは、「その馬券の的中率は20%だ」と感じるかもしれません。
つまり的中率が不明、さらに予想するにも人によって違うとなると、万人に共通する「期待値」は算出できないということになります。
それでも馬券の期待値を考えたいという方には、「自分なりの期待値」を算出する方法を紹介しておきましょう。
単勝馬券の場合
単勝馬券の期待値を計算する場合は、対象となる馬が1頭ですから、単純にその馬が勝つ確率を考えるということになります。
もちろん馬券予想に期待値を活用するわけですから、馬券を購入する前、レースが行われる前に、自分なりに勝率を考える必要があります。
一例として2021年10月31日に行われたGⅠレース【天皇賞・秋】を思い出してみましょう。前年無敗で三冠を達成したコントレイル、2021年皐月賞を無敗で制したエフフォーリア、そしてマイルを中心にGⅠ5勝(当時)を挙げていたグランアレグリアの3頭が人気を分け合い、4番人気以降を大きく引き離していました。
このレースにおける3頭の単勝オッズと、予想勝率を仮定して期待値を出してみましょう。
馬名 | 単勝オッズ | 予想勝率(仮定) | 期待値 |
①コントレイル | 2.5倍 | 30% | (2.5×0.3×100=)75% |
⑨グランアレグリア | 2.8倍 | 40% | (2.8×0.4×100=)112% |
⑤エフフォーリア | 3.4倍 | 30% | (3.4×0.3×100=)102% |
コントレイルとエフフォーリアよりも若干グランアレグリアの方が勝つ確率が高いと考えた場合、グランアレグリアの期待値がもっとも高くなります。さらにエフフォーリアに関しても期待値は100%を超えるので、狙って期待できるということになります。
仮に予想勝率が3頭全く互角であれば、単勝オッズがもっとも高いエフフォーリアの期待値がもっとも高いことになります。
このように、単勝馬券の期待値を算出する場合は、自分なりの勝率を考え、そこに単勝オッズを掛け合わせることで算出できます。
馬連馬券の場合
買う馬が1頭の単勝や複勝馬券の場合は上記の通り、1頭に関する確率を想定すれば期待値は計算できます。では、馬券対象が2頭に増える馬連馬券の場合はどのように計算すればいいでしょうか?
馬連馬券は狙う馬が2着以内に入れば的中するわけですから、予想するのは2着以内に入る確率、つまり「連対率」ということになります。この連対率に馬連オッズをかけて期待値を計算するのですが、馬連の場合は馬券対象馬が2頭います。この場合は、2頭の連対率をともにかけ合わせて計算します。
文章では伝わりにくいかと思いますので。単勝馬券に引き続き、2021年の天皇賞・秋を例に馬連馬券の期待値を算出してみましょう。
馬名 | 予想勝率(仮定) | 予想連対率(仮定) |
①コントレイル | 30% | 40% |
⑨グランアレグリア | 40% | 90% |
⑤エフフォーリア | 30% | 70% |
単勝馬券の続きで考えてみました。この人はグランアレグリアがやや勝率が高そうだと思っており、連対であればほぼ間違いないと思っています。エフフォーリアとコントレイルに関しては、より安定して上位に来るのはエフフォーリアと考えており、コントレイルは突き抜ける可能性はあるものの、惨敗する可能性もあると考えています。
ではこの3頭の実際の馬連オッズと、上の表の予想連対率で、馬連3点の期待値を計算してみましょう。
馬連買い目 | 馬連オッズ | 期待値 |
①-⑤ | 3.9倍 | (0.4×0.7)×3.9×100=109.2% |
①-⑨ | 3.7倍 | (0.4×0.9)×3.7×100=133.2% |
⑤-⑨ | 5.0倍 | (0.7×0.9)×5.0×100=315.0% |
すべての買い目で100%を超えていますが、これは当然。この3頭で決まる確率100%と考えていれば、馬連1番人気のオッズが370円ですから、3点買いでも必ずプラスになるからです。
この中でももっとも期待値が高いのがグランアレグリアとエフフォーリアの組み合わせ。期待値は300%を超えます。
現実的にこの馬券(馬連⑤-⑨)は外れています。つまりこの方は予想の段階で間違っていたということに(本命視のグランアレグリアが3着)なります。
三連複の場合は3頭の複勝率を掛け合わせる、ワイドの場合は2頭の複勝率を掛け合わせることで、期待値を計算できるということになります。
期待値を自力で算出する方法
自分なりに勝率や連対率を想定すれば、だれでも自分なりの期待値は算出できます。しかし難しいのは自分なりの予想勝率、予想連対率などを算出することでしょう。
こうした数字で馬券を予想する場合のポイントは、「感情を含めないこと」です。感情が入ってしまうと、正確な期待値が算出できません。
ちなみに過去の膨大なデータから勝率や連対率を割り出し、最終オッズを加味した期待値で馬券を購入するというのは、いわゆる「AI予想」の手法です。人工知能であるAIには感情がないため、冷静に数字のみで期待値を判断でき、そのため回収率が高いといわれています。
自分で勝率予想するのは難しいという方には、以下の記事で無料で見られるAI予想のおすすめサイトをまとめていますので、こちらを参考にしてもいいでしょう。
【2022年最新版】競馬無料予想ランキングTOP5【AI予想サイト】
自分で計算して挑戦してみたいという方には以下の方法がおすすめとなります。
過去のデータを調べる
予想勝率や連対率を、自分の感覚を抜きに冷静に数字で算出するとなった場合、頼りになるのは「過去データ」です。JRA-VANのデータラボなど、多くの競馬データを閲覧できるソフトなどを用意し、そこから勝率、連対率を抜き出しましょう。
ここで問題となるのが、「どのデータの勝率を参考にするのか?」ということです。競馬にはあらゆるデータがあります。血統データ、馬場状態のデータ、距離別データ、競馬場別データ、騎手データなどなど。あらゆるデータの中で、どのデータに注目するのかで、算出される勝率や連対率が変わってきます。
自分で調べられるデータ、もしくは自分が重視したいデータを参考にするといいでしょう。
では実例で紹介していきましょう。引き続き2021年の天皇賞・秋、3強のデータを調べてみます。参考にするのは血統・性別のデータ。「東京芝2,000mの成績」を過去5年遡ってみました。ちなみにデータを参照する場合は、より分母の大きいもの(実施数の多いもの)を選ぶとより正確になります。
東京芝2000mの成績(2016年10月1日~2021年9月30日) | ||||
馬名 | 条件 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
コントレイル | ディープインパクト産・牡馬 | 13.0% | 27.1% | 38.5% |
グランアレグリア | ディープインパクト産・牝馬 | 9.6% | 24.1% | 36.1% |
エフフォーリア | エピファネイア産・牡馬 | 10.5% | 26.3% | 31.6% |
※参考:JRA-VAN Target
期待値を算出するために必要な勝率などのデータが集まりました。ここから期待値を算出しますが、手軽に算出できるように、PCがある方はエクセルなどを用意しておくといいでしょう。
エクセルで関数を組む
ご自宅のPCにエクセルなど表計算ソフトが入って入れば、関数を組んでおけば簡単に期待値を算出できます。期待値の計算式は単純な掛け算ですので、関数といっても非常に単純なもの。あらかじめ設定しておけば、いろいろなレースで活用できます。
上の画像は2021年天皇賞・秋の馬券別期待値。さほど高くないと感じるかもしれませんが、これは「血統」と「性別」、「馬場&距離」の3つのデータから算出しただけの数値。実際の競馬ではこれにローテーションや調子、騎手、天候、詳細な馬場状態、レースのペースなどいろいろな条件が加わりますので、期待値はどんどん変化していきます。
100%を超える馬券を狙う
期待値に関しては基本的に高いほど買う価値が高い馬券となります。理想は100%超えの馬券ですが、100%を超える馬券が見当たらない場合は、購入候補の中から、もっとも期待値の高い馬券を購入しましょう。
改めて2021年天皇賞・秋の結果を見てみましょう。単勝期待値が最も高いのはエフフォーリア。このデータで単勝を買っていれば、期待値通り馬券は的中したということになります。また、この3頭で三連複が決まり、払い戻しが期待できる期待値は約15%。これをどう見るかです。
2021年天皇賞・秋は16頭立てで行われました。三連複の組み合わせは全部で560通り。1点勝負をした場合の単純な的中確率は1/560ですから約0.17%ですから、ここから考えればかなり高い確率ともいえます。
独自の期待値で買い目を提供してくれる無料ソフト
上記の通り、過去データを参照したり、自分なりの勝率、連対率を想像できるのであれば、誰でも簡単に期待値は算出できます。しかし、過去データが参照できない、自分なりの勝率の設定などが難しいという方もいらっしゃるでしょう。
そういった方には、無料で活用できる競馬ソフトがおすすめ。JRA-VANの会員になる、対応するPCを持っているなどある程度の条件はありますが、初心者の方でも使いやすいソフトがありますので、代表的なソフトを紹介しておきましょう。
RB☆STRIKE!
※参照:億の馬券術HP
PUSH!
RB☆STRAIKE!は、中央競馬向けのソフト。あらゆる中央競馬のデータ、馬場状況、状態などを駆使し、そのレースでもっとも期待値の高い馬券を教えてくれるソフトになります。
さらにI-PATと連携しておけば、自分で操作をしなくても、自動的に馬券を購入してくれるシステムも搭載。仕事や私用などで、どうしても馬券を買いに行けない場合なども、ソフトがもっとも期待値の高い馬券を購入してくれます。
地方競馬にも対応は可能ですが、別途地方競馬用の指数を購入する必要があります。こちらの指数を購入すれば、楽天競馬と連携し、地方競馬も自動購入が可能になっています。
まとめ
期待値とは、1回の試行における平均値です。馬券で考えれば、馬券を購入した際、購入金額に対しどのくらいの割合で払い戻しが期待できるかを表す数値になります。当然期待値が100%を超える馬券であれば、買えば買うほど勝ち続けることになります。
ただし期待値を出すには、その馬券の正確な的中確率が必要になります。競馬の場合この的中確率がレース前には分からないという問題があります。
そのため期待値を考える場合、過去データや自分の予想などで、その馬券の的中確率を予想しなければいけません。この予想確率が正しければ正しいほど、正確な期待値を算出できることになります。
とはいえ期待値は絶対の数値ではありません。「それだけ期待できる」という目安となりますので、過信しすぎず、頭の片隅に入れながら予想するのがおすすめです。